【その比率が原因】PFCバランス通りに食べてるのに痩せない理由
「比率はちゃんと守ってるのに、体重が全然動かない」——PFCバランスを調べて、出てきた数字どおりに1か月やってみた。鶏むね肉とサラダを続けて、間食も我慢した。それでも体重計の表示はほとんど同じ。そんな方も多いのではないでしょうか。
先に結論を書きます。動かない原因は、あなたの意志の弱さでも体質でもなく、**参考にしている比率の数字そのもの**にある場合があります。ネット上に広く出回る「たんぱく質25〜30%」という比率は、日本の公的な目安の上限を超えた数字。PFCを割合(%)で持っている限り、どれか1つを増やせば残りは必ず減る——そのシーソーの構造が、詰まりの裏側にあります。
この記事ではまず**5年前にこのページに書いていた2つの誤りを取り消します**。そのうえで公的な目標量から自分のP・F・Cのグラム数を出す3ステップと、計算しない日でも回せる運用ルールを紹介し、読み終わる頃には「なぜ今まで動かなかったのか」を自分の言葉で説明できるはずです。
- 「PFCバランス通りに食べてるのに痩せない」なら、疑うのは体ではなく手元の数字
- その比率、「たんぱく質25〜30%」になっていませんか
- 【訂正】5年前のこの記事に書いていた2つの誤りを、先に取り消します
- 公的な目安は「エネルギー産生栄養素バランス」という別の名前で決まっている
- たんぱく質を30%に寄せると、脂質と炭水化物の「枠」がどう潰れるか
- 枠が潰れた先に起きること:総カロリーが足りず、だるくて続かない
- 【手を動かす】自分のP・F・Cのグラム数を出す3ステップ
- 出た数字と、今までの数字を並べる。ここで「なぜ痩せなかったか」が見える
- それでも数字が成立しない人へ:小柄な人ほど脂質の枠が先に尽きる
- 脂質を削りすぎるのが逆効果になる理由(エネルギー源だけじゃない)
- 炭水化物は「減らす」より「中身を見る」:同じ50%でも結果が変わる
- たんぱく質は「割合」より「グラム」で持つと事故が減る
- 毎食の計算が続かない人へ:計算しない日でも回せる3つのルール
- 1〜2か月やって変化がないときの、見直す順番
- 「栄養士に相談」を活かすなら、自分の数字を持っていく
- よくある質問
- まとめ:比率を疑うのは、自分を疑うより先でいい
「PFCバランス通りに食べてるのに痩せない」なら、疑うのは体ではなく手元の数字
停滞期、体質、意志の弱さ。うまくいかないとき、私たちはまず自分の内側を疑います。ですが先に点検してほしいのは、**スマホのメモやアプリの設定欄に入っている、あの比率の数字のほう**です。
「PFCバランスを取っているのに1か月続けて痩せる気配がない」という相談は、Q&Aサイトにいくつも並んでいます。あなただけが失敗しているわけではないんです。
この記事のゴールを先に宣言します。読み終わったとき、**自分の年齢・性別・活動量から、P・F・Cのグラム数を自分で出せる**こと。そして今までの数字と並べて、なぜ動かなかったのかを自分で説明できること。この2つです。
これは「あなたの努力が足りなかった」という話ではありません。1か月続けられたなら、それはもう十分に難しいことをやり切っています! 壊れていたのは努力ではなく、設定のほうでした。
その比率、「たんぱく質25〜30%」になっていませんか
ここでいったん読むのを止めて、実際に確認してみてください。スマホのメモ、食事管理アプリの目標設定欄、ノートの端に書き写した数字。**たんぱく質が25%や30%になっていませんか。**
確認できたら、その3つの数字をどこかに控えておいてください。あとで新しく出す数字と並べます。
「たんぱく質25〜30%」という比率は、ネット上のあちこちで見かけますが、後で見るとおり**日本の公的な目安ではたんぱく質の上限は20%(総エネルギーに占める割合)です。** 25%も30%も、その上限を超えています。
なぜこの数字が流通しているのか。減量中の人や筋トレをしている人向けの設定が、一般向けの目安として広まったのでは、という見方はありますが、由来を示す資料は見つけられませんでした。断定できるのは、**「公的な目標量の上限を超えている」という事実のほう**です。
持ち帰ってほしい習慣を1つ。**比率を見かけたら、まず「これは誰向けの数字か」を確認する。** 出どころが書かれていない比率は、誰に向けて設計されたものか分かりません。分からないものを自分の体に適用しているのが、今の状態です。
……と、他人事のように書いていますが。実は**5年前、このページ自身がその「たんぱく質25〜30%」を載せていました。** 次のセクションで、そこから片付けます。
【訂正】5年前のこの記事に書いていた2つの誤りを、先に取り消します
このページは2021年4月に公開した記事の書き直しで、書いたのは私です。当時の本文には、はっきりした誤りが2つありました。ごまかさずに、先に取り消させてください。
訂正①:比率の数字が公的な目標量とズレていた
当時の本文には、こう書いてありました。
一般的なPFCバランスの目安は、タンパク質25-30%、脂質20-25%、炭水化物50-60%とされています。
これは一般の読者向けの目安として誤りで、日本の公的な目安は厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』の「エネルギー産生栄養素バランス」で示され、**たんぱく質13〜20%、脂質20〜30%、炭水化物50〜65%**(総エネルギーに占める割合)が目標量です。たんぱく質の下限は年齢帯で変わります。
つまり当時書いた「タンパク質25-30%」は目標量の上限20%を超え、脂質の「20-25%」も炭水化物の「50-60%」も上限が低く、3つとも公的な目標量からずれています。
訂正②:炭水化物と血糖値の関係が逆だった
もう1つ。当時の本文には、こう書いてありました。
タンパク質は筋肉や骨の形成に必要な栄養素であり、脂質はエネルギー源としての役割を果たし、炭水化物は急激な血糖値の上昇を抑える役割があります。
炭水化物の部分が逆です。三大栄養素のうち食後の血糖値にいちばん影響するのは炭水化物で、**上げる側**にあります。
ただし「炭水化物はすべて血糖値を上げる」と書くのも不正確です。炭水化物は**糖質と食物繊維**に分かれ、血糖値を上げるのは糖質のほう。同じ炭水化物でも、食物繊維が多い食品は上がり方が穏やかになります。急上昇を抑える側にいるのは食物繊維や食べる順番のほうで、詳しくは後半で扱います。
なお同じ一文の「脂質はエネルギー源としての役割を果たし」も説明不足でした。後半で補います。
なぜ訂正から始めるのか。**この2つの誤りが、この記事を読んだ人の詰まりの原因そのものになっていた可能性があるから**です。上限を超えた比率を書き、炭水化物の役割を逆に書いていた。その状態で「PFCバランスが大事です」と言っても、うまくいくはずがありません。
公的な目安は「エネルギー産生栄養素バランス」という別の名前で決まっている
そもそも「PFCバランス」という言葉は公的な用語ではありません。日本の基準では**「エネルギー産生栄養素バランス」**という名前で整理されていて、検索するときもこの語のほうが公的な資料にたどり着きやすくなります。
厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』が示している目標量は、次のとおりです。
| 栄養素 | 目標量(%エネルギー) |
|---|---|
| たんぱく質(P) | 13〜20%(49歳以下)/14〜20%(50〜64歳)/15〜20%(65歳以上) |
| 脂質(F) | 20〜30% |
| 炭水化物(C) | 50〜65% |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html)。
この「%」は、**その栄養素から摂るエネルギーが1日の総エネルギーに占める割合**を指し、グラム数の割合ではありません。この定義が、後の計算でそのまま効いてきます。
注目してほしいのは、たんぱく質の**下限が年齢帯で上がっていく**点。49歳以下は13%、50〜64歳は14%、65歳以上は15%が下限で、上限は一律20%。「年を取るほどたんぱく質を意識したほうがいい」という話は、この下限の動きに対応しています。
もう1つ、目標量はどれも**幅**で示されています。ピンポイントで当てる必要はなく、幅のどこかに収まっていればいい設計です。逆に言えば、幅の外に出ていれば「ずれている」と判断でき、たんぱく質25%はまさにその幅の外でした。
たんぱく質を30%に寄せると、脂質と炭水化物の「枠」がどう潰れるか
ここが、この記事でいちばん見てほしい構造です。実際に数字を並べてみます。
エネルギー換算の係数は、たんぱく質と炭水化物が1gあたり4kcal、脂質が1gあたり9kcal(国立循環器病研究センターほか)。
**例:1日1,800kcalで設定した場合**
- たんぱく質30%にすると→1,800×0.30÷4=135g(540kcal)。
- 残りは1,260kcal。ここに脂質20〜25%(古い記事の数字)を当てると、脂質は40〜50g。
- 炭水化物に残るのは810〜900kcal、グラムで約203〜225g(総エネルギーの45〜50%)。
同じ1,800kcalで、公的な目標量の真ん中(たんぱく質15%・脂質25%・炭水化物60%)にするとどうなるか。たんぱく質1,800×0.15÷4=**67.5g**、脂質1,800×0.25÷9=**50g**、炭水化物1,800×0.60÷4=**270g**。
たんぱく質は135gから67.5gへ、ちょうど半分。そして炭水化物は約203gから270gへ、**60〜70gほど増えます。**
つまり、**たんぱく質を30%に寄せた分だけ、炭水化物の枠から取り上げていた**ことになります。3つの枠は独立しておらず、合計が必ず100%になるシーソーです。片方を上げれば、もう片方は下がる——当たり前のようで、比率だけ見ていると意外と気づけません。
ここで前提が1つ崩れます。「たんぱく質は多いほど良い」。多く摂ること自体は悪くありません。ただ**割合で管理している限り、増やした分は必ず他の2つから引いている**。これが構造です。
「じゃあ結局、私は何gにすればいいの?」という話は、このあとの3ステップで計算します。ここでは構造だけ押さえておけば十分です。
枠が潰れた先に起きること:総カロリーが足りず、だるくて続かない
枠が潰れると、次に何が起きるか。**総エネルギーが必要量を大きく下回った設定になる**ことがあります。
Q&Aサイトには、1日1,700kcal前後に設定して週3回の筋トレも並行しているのに1か月まったく動かない、という相談が実際にあります。回答側の指摘も「設定自体が低すぎるのでは」という趣旨でした。
低すぎる設定を続けると、生活のほうに先に出ます。夕方に集中力が切れ、週末にまとめて食べてしまい記録が途切れる。そして「また続かなかった」と自分を責める。
はっきりさせておきたいのは、**「意志が弱いから続かない」のではなく「続かない形になっている設定を選んでしまった」**ということ。責める相手は自分ではなく設定です。
なお「代謝が落ちる」「省エネモードになる」といった説明もありますが、根拠を示せないためこの記事では書きません。書けるのは、**必要量を大きく下回る設定は長く続かない。続かなければ、何が悪かったのかを検証することもできない**という範囲までです。
だから順番を逆にします。**比率から決めるのではなく、総エネルギーから決める。** 先に必要量の目安を置き、そこに%を当ててグラムに直す。次のセクションでその手順をやります。
【手を動かす】自分のP・F・Cのグラム数を出す3ステップ
古い記事は、この部分を「栄養士に相談して設定することが大切です」で終わらせていました。ここからの3ステップが、その一文の置き換えです。電卓(スマホの電卓で十分)を1つ用意してください。
ステップ1:1日に必要なエネルギー(kcal)の目安を出す
ここは自分で係数をかけ算する必要がありません。『日本人の食事摂取基準(2025年版)』に、**年齢・性別・身体活動レベル別の「推定エネルギー必要量」**が表として載っています。自分の行の数字を読むだけです。
身体活動レベルは3段階。
- 低い(Ⅰ):生活の大部分が座位で、静的な活動が中心
- ふつう(Ⅱ):座位中心の仕事だが、通勤・買い物・家事・軽いスポーツなどを含む
- 高い(Ⅲ):移動や立ち仕事が多い、あるいは余暇に活発な運動習慣がある
推定エネルギー必要量(kcal/日)は次のとおりです。
| 年齢 | 男性 低い/ふつう/高い | 女性 低い/ふつう/高い |
|---|---|---|
| 18〜29歳 | 2,250/2,600/3,000 | 1,700/1,950/2,250 |
| 30〜49歳 | 2,350/2,750/3,150 | 1,750/2,050/2,350 |
| 50〜64歳 | 2,250/2,650/3,000 | 1,700/1,950/2,250 |
| 65〜74歳 | 2,100/2,350/2,650 | 1,650/1,850/2,050 |
| 75歳以上 | 1,850/2,250/— | 1,450/1,750/— |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」。75歳以上に「高い」の設定はありません。
たとえば38歳・男性・デスクワーク中心なら、30〜49歳の「低い」で2,350kcalが目安になります。
ここで出るのは**目安であって、あなたの正解ではありません。** 体格も日々の動き方も人それぞれなので、1か月続けて動きを見てから調整する前提で受け取ってください。
体重を落としたい場合はここから少し引くことになりますが、「何kcal引けばよい」と断定できる公的な数字は見つけられませんでした。書けるのは、**表の数字を大きく下回る設定にしないこと**だけです。
ステップ2:目標量の%を当てる
ステップ1で出した数字に、エネルギー産生栄養素バランスの目標量を当てます。たんぱく質13〜20%(年齢帯で下限が変わる)、脂質20〜30%、炭水化物50〜65%でした。
最初の一手としておすすめなのは、**幅の真ん中あたりを選ぶ**やり方。たとえば**たんぱく質15%・脂質25%・炭水化物60%**で合計100%になります。上限や下限に張り付けると少しのずれで幅の外に出てしまいますが、真ん中なら多少の上下も吸収されます。続けながら自分が回しやすい位置へ寄せていけば大丈夫です。
ステップ3:4kcal / 9kcal で割ってグラムにする
あとは割り算だけです。たんぱく質と炭水化物は4で、脂質は9で割ります。
**例:2,000kcal、たんぱく質15%・脂質25%・炭水化物60%の場合**
- たんぱく質:2,000×0.15=300kcal→300÷4=75g
- 脂質:2,000×0.25=500kcal→500÷9=約56g
- 炭水化物:2,000×0.60=1,200kcal→1,200÷4=300g
これで完了です。出てきた3つの数字が、今日から目安にできるグラム数になります。
注目してほしいのは、**この計算に個人向けの特殊な係数が1つも出てこない**こと。使ったのは「表から読んだ総エネルギー」「公的な目標量の%」「4と9」だけ。誰かに設定してもらう必要はなく、スマホの電卓があれば5分で出せます!
同じ計算を、今まで使っていた比率でもやってみてください。2,000kcal・たんぱく質30%なら、2,000×0.30÷4=150g。75gの倍です。この2つを並べると見えるものが、次のセクションの本題です。
出た数字と、今までの数字を並べる。ここで「なぜ痩せなかったか」が見える
さきほど控えた古い数字と、今出した新しい数字を横に並べて書き出してみてください。手書きでもメモアプリでも構いません。
| 今まで使っていた数字 | 今出した数字 | |
|---|---|---|
| 総エネルギー | ||
| たんぱく質(g) | ||
| 脂質(g) | ||
| 炭水化物(g) |
差分の読み方は、だいたい3パターンに分かれます。
パターンA:たんぱく質が新しい数字より大幅に多い
いちばん多いパターン。たんぱく質を増やした分、脂質か炭水化物の枠から取り上げていました。たんぱく質を目標量の幅に戻すだけで、炭水化物と脂質の枠が一気に広がります。食べられるものが増える修正なので、ハードルは高くありません。
パターンB:総エネルギーが新しい目安を大きく下回っていた
比率より先に、総量が問題だったパターンです。だるさや週末の反動に心当たりがあるなら、ここに当たっている可能性があります。比率をいじる前に、総エネルギーを目安まで戻すのが先です。
パターンC:比率も総量も、そう変わらない
新旧の数字を並べても大差がなかった人は、**比率の問題ではありませんでした。** ここははっきり言い切ります。
次に疑うのは記録の精度です。調味料、炒め油、ドレッシング、飲み物、ちょっとつまんだもの。抜けやすく、積み上がると無視できません。あるいは体重の測り方かもしれない。この2つは後半で扱います。
どのパターンでも共通して言えるのは、**今までの記録があるから比較できている**ということ。1か月続けた記録は無駄になっていません。
それでも数字が成立しない人へ:小柄な人ほど脂質の枠が先に尽きる
総エネルギーが低い人ほど、**同じ%でもグラムに直したときの枠が小さくなります。** 実際に詰まるときは、これが原因です。
計算してみます。1,400kcalで脂質25%なら、1,400×0.25÷9=**約39g**。「脂質38g以内という設定が厳しすぎる」という相談は、この構造から必然的に出てきます。厳しすぎるのではなく、総量が小さいぶん枠も小さくなっているだけです。
たんぱく質を足そうとすると、グラムは増えても総エネルギーはあまり増えないため**たんぱく質の比率だけが跳ね上がります。** 板挟みです。「目安だから多少オーバーしてもいい」で流されがちですが、理由が説明されないことも多いです。
抜け道は3つあります。
- 総エネルギー自体を必要量まで戻す。削りすぎていないか、ステップ1の表と見比べてください。
- 幅の中で位置を動かす。目標量は幅なので、上限側にも下限側にも寄せられます。脂質を30%寄りにすれば、1,400kcalでも1,400×0.30÷9=約47g。25%のときより8gほど増えます。
- 1日単位で合わせない。今日オーバーしたら明日で調整する、くらいの粒度にします。数日〜1週間の平均で幅に入っていれば十分です。
脂質のグラム数をもっと詰めたい方は、【1日50gの正体】脂質の摂りすぎは何gから?自分で出す3ステップで別の角度から扱っています。
脂質を削りすぎるのが逆効果になる理由(エネルギー源だけじゃない)
古い記事が「脂質はエネルギー源としての役割を果たし」で止めていた部分を、ここで補います。
脂質の役割はエネルギー源だけではありません。公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット」では、脂質について次のような働きが挙げられています。
- 細胞膜や核膜を構成する材料になる
- ホルモンの材料になる
- 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収を促す
- 1gあたり9kcalと、三大栄養素の中で最も効率のよいエネルギー源になる
エネルギーの話だけで脂質を語ると「削るほど良い」という読み方になりますが、実際には材料としての仕事も担っています。
逆のパターンもあります。主食を抜いた結果、おかずが増えて**気づかないうちに脂質が過剰になっていた**という体験談も、個人の実践記で見かけます。「炭水化物を削れば正解」という一次元の見方だと、こちらには気づけません。
だから目標量の下限20%は、**「これ以上減らすな」の線でもある**と読んでおくのが実用的です。上限だけ見て運用すると、下側にはみ出したことに気づかないままになります。
なお脂質不足の症状について断定はしません。体調に不安がある場合は、自己判断で変えず医師や管理栄養士に相談してください。
炭水化物は「減らす」より「中身を見る」:同じ50%でも結果が変わる
訂正②の続きです。ここは実践の話に落とします。
前提をもう一度。**炭水化物=糖質+食物繊維**。血糖値を上げるのは糖質のほうで、食物繊維は消化・吸収されずに大腸まで届き、糖質の吸収をゆるやかにすると説明されています。
ということは、**同じ「炭水化物60%」でも、中身が何かで食後の血糖の上がり方は変わります。** 精製された白米や小麦粉が中心なら食物繊維が少ないぶん吸収が速く、血糖が上がりやすい。全粒穀物や食物繊維を含む食品が混ざっていれば、上がり方は穏やかになります。食品ごとの上がりやすさを表すGI値という考え方もありますが、GI値だけで食品を「良い・悪い」に二分するのは乱暴だと思います。
実行できる形にすると、こんなところです。
- 白米の一部を玄米や雑穀に置き換える。全部を変えなくていい。3合のうち1合だけでも。
- 主食と一緒に、野菜・海藻・豆・きのこを1品入れる。味噌汁に具を足すのがいちばん楽です。
- 食べる順番を、汁物や野菜から始める形にしてみる。手間はゼロです。
ここで、古い記事の誤りが読者に与えていた実害を言語化しておきます。「炭水化物は血糖値の上昇を抑える」と書かれていれば、炭水化物は**量だけ見ておけばいい栄養素**になり、中身を見る発想が丸ごと消えます。5年間、そう読ませてしまっていました。
食物繊維の側からもう少し踏み込みたい方は、【第6の栄養素】食物繊維で血糖値スパイクと夏バテを賢く予防する方法もあわせてどうぞ。
たんぱく質は「割合」より「グラム」で持つと事故が減る
ここからは運用の話です。**たんぱく質だけは%ではなくグラムで持つ**ことをおすすめします。
理由は単純で、%で持つと総エネルギーが動いた日に目標が勝手に上下するからです。多めに食べた日は目標も上がり、控えめな日は下がる。グラムで固定すれば、総量が変わっても狙う場所は変わりません。
「Pだけ守れば、FとCは適当でいいのか」という質問がQ&Aサイトにありました。条件付きで、はいと答えます。**たんぱく質をグラムで固定し、脂質と炭水化物は目標量の幅で持つ運用は、管理コストが確実に下がります。** ただし総エネルギーが必要量を大きく下回っていると、この運用も意味を失います。土台が抜けたまま比率だけ整えても結果には出てきません。
「プロテインでたんぱく質を足すと、比率が偏るのでは」という不安についても。グラムで持っていれば、**そもそも「偏る」という発想が要らなくなります。** 確認するのは目標量の上限20%に当たっていないかだけ。2,000kcalなら20%=400kcal=100gが上限の目安です。そこに届いていなければ、足しても幅の中に収まります。
たんぱく質そのものの必要量や種類まで詳しく知りたい場合は、【完全ガイド】タンパク質とは?効果・種類・必要量を徹底解説にまとめてあります。
毎食の計算が続かない人へ:計算しない日でも回せる3つのルール
先に前提を共有します。**毎食きっちり計算し続けられる人は、ほとんどいません。** 続かないのは普通のことです。続かない方法を選び続けるのをやめるだけで済みます。
ルール1:管理する変数を、たんぱく質1つに減らす
前のセクションの運用そのものです。たんぱく質のグラムだけ固定し、脂質と炭水化物は幅で持つ。追いかける数字が3つから1つになるだけで、記録の心理的な重さがかなり変わります。
ルール2:1日単位で合わせない
締めを1日ごとにすると、外食した日が全部「失敗」になり、積み上がると人はやめます。**数日〜1週間の平均で幅に入っていればいい**という粒度に緩めてください。飲み会の翌日に帳尻を合わせるくらいで十分です。
ルール3:最初の2週間だけ全部記録する
これがいちばん効きます。最初の2週間だけ、面倒でも全部記録してみる。目的は継続ではなく、**自分の定番メニューの数字を覚えること**です。
朝の定番、コンビニで買いがちな昼、家で作る夕食。人が食べるものは思ったより繰り返します。10〜15パターンの数字を覚えてしまえば、それ以降は記録しなくても見当がつくようになります。
3つのルールを置いたうえで、道具の話をします。順番が逆になると、アプリを入れただけで満足して終わります。
私は普段、ChatGPTやClaudeに献立のアイデア出しや記録の整理を手伝ってもらっています。主治医の目標値をベースにした壁打ちで、記録を代わりに取ってくれる魔法ではありません。入力しない日は当然何も残りません。
記録そのものを軽くしたい方には、Claudeで作った無料の食事管理アプリ「FUEL COACH」で栄養管理をラクにする方法という記事も置いてあります。体重・身長・年齢・活動量から必要エネルギーとPFCのグラム数を出し、その日の摂取量と比べられます。
1〜2か月やって変化がないときの、見直す順番
設定を直したあと、次に困るのが「これで合っているのか分からない」問題です。判断の手順を決めておきます。
まず、**体重の測り方から直します。** 測るのは朝起きた直後の1回に固定する。日をまたいだ1〜2kgの動きは水分や食事の影響を受けやすく、一喜一憂しても判断材料にはなりません。週の平均、あるいは月単位の推移で見るほうが、はるかに読みやすくなります。
次に、評価する期間。1〜2週間で結論を出さないこと。同じ設定を最低1か月は続けてから判断する、くらいで構えておくと、余計な手直しをせずに済みます。
そして、変化がなかったときに見直す順番です。上から順に確認してください。
- ①総エネルギーの設定:ステップ1の表の数字を大きく下回っていないか。ここが最優先です。
- ②記録の抜け:調味料、炒め油、ドレッシング、飲み物、間食。抜けやすいものから順に潰します。
- ③比率の位置:幅の中でどこに寄せているか。上限・下限に張り付いていないか。
**比率をいじるのは最後です。** 多くの人はここから手を付けますが、①と②が動いている状態で③をいじっても、何が効いたのか分からなくなります。
「変化がない」の定義を体重だけにしないでください。**続けられているか。夕方にだるくないか。週末に反動が来ていないか。** これらも立派な判断材料です。体重が動いていなくても、改善しているなら設定は前より良くなっています。
「栄養士に相談」を活かすなら、自分の数字を持っていく
古い記事は、こう締めていました。
栄養士に相談して、個々の身体状況に合ったPFCバランスとカロリー摂取量を設定することが大切です。
相談すること自体は、無意味ではありません。無意味なのは、**手ぶらで相談すること**のほうです。
持っていくものは3つ。ステップ1〜3で出した自分の数字。2週間分の食事の記録。そして体重の推移。この3点があると、相談の中身が「何を食べたらいいですか」から「この設定のどこを直すべきか」に変わります。
なお「管理栄養士」と「栄養士」は別の資格です。医療機関や特定給食施設で個別の栄養指導を担うのは管理栄養士。相談先を探すときの参考にしてください。
最後に1つ。**体調に不安がある方、健康診断で数値の指摘を受けている方、持病や服薬がある方は、自己判断で食事を大きく変えないでください。** 医師や管理栄養士に相談したうえで進めるほうが安全です。この記事は診断や治療の代わりにはなりません。自分の現在地を数字で把握するための道具として使ってもらえたらと思います。
よくある質問
Q1. 計算ツールによって出てくる数字が全然違います。どれを信じればいいですか?
ツールごとに、必要エネルギーの推定式・活動レベルの区分・想定する目的が違うため、答えが違うのはむしろ当たり前です。信じるべきは「どのツールか」ではなく「どの前提で計算されたか」。この記事の3ステップなら総エネルギーも%も自分で決めるので、数字が食い違っても理由を説明できます。
Q2. プロテインでたんぱく質を足すと、比率が偏りすぎませんか?
たんぱく質をグラムで持っていれば偏るという発想が要らなくなります。確認するのは目標量の上限20%エネルギーに当たっていないかだけ。2,000kcalなら20%は400kcal、グラムで100gが目安です。むしろ注意したいのは、プロテインで足すぶん脂質や炭水化物を削りすぎていないかです。
Q3. PFCバランスは毎日きっちり合わせないと意味がないですか?
1日単位で合わせる必要はありません。数日から1週間の平均で目標量の幅に収まっていれば十分です。毎日ぴったり合わせるほうが続かず、検証もできなくなります。外食した日を失敗にしない運用のほうが、結果的に長く続きます。
Q4. 炭水化物をもっと減らせば早く痩せますか?
目標量の下限である50%エネルギーを大きく下回る運用は、この記事が扱う範囲を超えます。早く痩せるかどうかも断定しません。確実に起きるのは、削った分のエネルギーをどこで埋めるかという問題です。主食を抜いた結果おかずが増え脂質過剰になっていた、という逆パターンもあります。減らす前に中身を見るほうが先です。
まとめ:比率を疑うのは、自分を疑うより先でいい
長くなったので、3行にまとめます。
- ①手元の比率の出どころを確認する。たんぱく質が25〜30%になっていたら、そこが出発点です。
- ②公的な目標量(たんぱく質13〜20%・脂質20〜30%・炭水化物50〜65%)から、自分のグラム数を出す。総エネルギー×%÷4または9、それだけです。
- ③管理する変数をたんぱく質1つに減らして、週単位で見る。毎日ぴったり合わせようとしないこと。
1か月やって動かなかったのは、意志の問題ではなく設定の問題だった可能性が高い。最初にそう書きました。ここまで読んで自分の数字を出したなら、その仮説が自分に当てはまるかどうかを、もう自分で判定できるはずです。
この記事は、5年前に自分が書いた記事の訂正から始まりました。当時は「タンパク質25-30%」と書き、「炭水化物は血糖値の上昇を抑える」と書いていました。読んでくださった方に、遠回りをさせてしまったと思います。同じ場所に、今度は出どころの分かる数字を置き直しました。
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