年末年始に実家へ帰ると、食卓には雑煮。70代、80代になった親が、大きな餅をそのまま口へ運ぶ。見ていてヒヤッとしたことはありませんか?

この記事では、高齢の親が餅を詰まらせないための切り方と出し方、そして万一詰まったときの最初の動き方を、東京消防庁・消費者庁・仙台市消防局の公開情報だけをもとにまとめました。結論を先に言うと、切り方に決まった「何センチ」はありません。本人の噛む力に合わせて小さく切ることが基本です。そのうえで、帰省した家族で「台所係・声かけ係・見守り係・もしもの係」の4つを分けておく。これがこの記事の提案です。

応急手当の部分は、公的機関のページに書かれている手順と注意をそのまま紹介しています。情報はすべて2026年10月19日に確認したものです。

「親が雑煮の餅を大きいまま食べる」帰省前によく聞く不安5つ

この時期、親と餅について調べる人の悩みは、だいたい次の5つに集まります。

  • 餅は何センチに切ればいいのか分からない
  • 親が毎年、雑煮の餅を大きいまま食べる。注意しても聞いてくれない
  • お茶で流し込めば大丈夫なのか知りたい
  • 詰まったとき、119番と背中を叩くのはどちらが先か
  • 背中を叩くといっても、どこをどう叩けばいいのか

どれも「去年は大丈夫だったから」で先送りしがちな悩みです。ただ、正月の食卓は親戚が集まり、話も弾み、つい食べるペースが上がる場面。年に一度の席だからこそ、帰省前に段取りを決めておく価値があります。

ここから先は、悩みの順番に沿って答えていきます。読み終えれば、当日の台所と食卓でやることが一通りそろいます。

結論:高齢の親が餅を詰まらせない切り方は「本人の噛む力に合わせて小さく」

先に答えをまとめます。高齢の親が餅を詰まらせないための切り方は、「本人が無理なく食べられる大きさに、小さく切る」です。

東京消防庁「餅などによる窒息事故に注意!」(2025年12月12日更新)は、事故を防ぐポイントの1つ目に「餅は小さく切って、食べやすい大きさにしましょう」を挙げています。消費者庁の注意喚起(2020年12月23日公表)も同じく「小さく切り、食べやすい大きさに」とし、あわせて「一口の量は無理なく食べられる量に」と書いています。

つまり大事なのは、餅そのものの寸法より、親の噛む力・飲み込む力に合わせること。そして切ったあとの「一口の量」まで気を配ることです。

ただ、切り方だけで事故を防げるわけではありません。東京消防庁が挙げるポイントは全部で5つあります。

  1. 餅は小さく切って、食べやすい大きさにする
  2. 急いで飲み込まず、ゆっくりと噛んでから飲み込む
  3. 乳幼児や高齢者と一緒に食事をする際は、食事の様子を見守るなど注意を払う
  4. 餅を食べる前に、お茶や汁物を飲んでのどを潤しておく
  5. いざという時に備え、応急手当の方法をよく理解しておく

この記事では、この5つを帰省した家族の「係」に割り振ります。台所係・声かけ係・見守り係・もしもの係。1人で全部を抱えず、分担して当日を迎える形です。

黒い石の上に並んだおせち料理。栗きんとん、伊達巻、いくらをのせた小鉢など

危ないのは1月、80代がいちばん多い(東京消防庁の5年分)

「うちの親はまだ元気だから」と思っている人ほど、数字を一度見ておきましょう。

東京消防庁によると、令和2年から令和6年までの5年間に、東京消防庁管内(東京都のうち稲城市と島しょ地区を除く地域)で餅など(団子なども含む)をのどに詰まらせて救急搬送された人は338人。そのうち約9割以上が65歳以上の高齢者でした。

月別で最も多いのは1月の135人、次いで12月の42人。この2か月で全体の半数以上を占めています。

餅などの窒息で救急搬送された人(5年間)救急搬送人員1月135人12月42人2〜11月の合計161人
出典:東京消防庁「餅などによる窒息事故に注意!」(2025年12月12日更新、東京消防庁管内)。1月・12月はページ本文の数字。2〜11月は、5年間の合計338人から1月と12月を引いて計算した10か月分の合計で、1か月ごとの人数ではありません。

グラフの一番下の161人は、2月から11月までの10か月を足した数です(338人から1月の135人と12月の42人を引いて計算)。10か月かけてようやく161人なのに、1月はひと月だけで135人。年末年始に集中しているのが分かります。

年齢で見ると、65歳から増え始め、80歳代で最も多くなっています。さらに、救急搬送された人の約7割は、病院での最初の診断で「中等症以上」でした。東京消防庁の定義では、中等症は「生命の危険はないが入院を要するもの」。つまり7割の人が、少なくとも入院が必要な状態だったということです。

全国の死亡事故でも傾向は同じです。消費者庁が厚生労働省の人口動態調査の調査票情報をもとに平成30年から令和元年の2年間を分析したところ、高齢者の餅による窒息死亡事故の43%が1月に起きており、特に正月三が日に多いことが分かりました。男性の死亡者数は女性の2.6倍です(消費者庁、2020年12月23日公表)。

理由について、消費者庁は二つの面を挙げています。一つは体の変化で、高齢になると口の中や喉の機能が変わり、噛む力や飲み込む力が弱くなること。もう一つは、正月の雑煮の餅は久しぶりに食べる場合が多く、食べなれていないことです。仕組みの話はここまでにして、次は家族で何をするかです。

親の体の変化は、餅を噛む力だけに出るものではありません。足腰の衰えも気になってきたら、太ももの筋肉と健康寿命の関係をまとめた記事もあわせて読んでみてください。

※1月・12月の人数、338人、約9割以上、約7割は東京消防庁「餅などによる窒息事故に注意!」(2025年12月12日更新、令和2〜6年の集計)、43%と2.6倍は消費者庁「年末年始、餅による窒息事故に御注意ください!」(2020年12月23日、平成30〜令和元年の分析)によります。

YU人
YU人
結局、何センチに切ればいいの? 数字で教えてほしいな
とりじん
とりじん
実は、公的機関が示している決まった数字はないんです。だから見るのは親の噛む力のほう

「餅は何センチに切る?」高齢者向けに決まった数字はない

「餅 何センチに切る 高齢者」と調べても、はっきりした答えが見つからない。それもそのはずで、この記事で確認した東京消防庁・消費者庁のページには、餅を何センチに切るかという数字は書かれていません。書かれているのは「小さく切って、食べやすい大きさに」という考え方です。

数字がない理由は公的機関のページには書かれていません。ただ、噛む力や飲み込む力は人によって違います。誰にでも当てはまる一つの寸法を探すより、目の前の親に合わせるほうが現実的です。

では、何を目安にすればいいのか。この記事では、次の2つを提案します。

  • 親が無理なく噛める大きさにする。いつもより小さめに切り、食べにくそうならさらに小さくする
  • 一口の量そのものを控えめにする。消費者庁の「一口の量は無理なく食べられる量に」に沿って、切った餅を一度にいくつも口に入れないようにする

なお、ネット上には具体的な寸法を書いた記事もあります。ただ、この記事で確認した公的機関のページには数字の目安がないため、ここでは特定の数字はおすすめしません。迷ったら「小さめ」「少しずつ」と覚えておけば十分です。

今年の雑煮は「係」を4つ決めてから出す

ここからが本題です。帰省した家族で、当日の係を4つに分けておきましょう。1人がすべてを気にかけるのは難しくても、役割が決まっていれば、それぞれが自分の持ち場に集中できます。

係やることもとになる公的機関の注意
①台所係餅を小さく切る/一口の量を減らして出す/食べる前のお茶や汁物を用意する東京消防庁の1・4、消費者庁
②声かけ係「ゆっくり、よく噛んで」を角を立てずに伝える東京消防庁の2、消費者庁
③見守り係食べ終わるまで、誰か1人が様子を見る東京消防庁の3、消費者庁
④もしもの係詰まったサインに気づき、助けを呼ぶ・119番・応急手当の流れを頭に入れておく東京消防庁の5、消費者庁、仙台市消防局

家族が2人しかいないなら、1人が複数の係を兼ねても構いません。ポイントは「誰がやるか」を口に出して決めておくこと。「みんなで気をつけよう」だけだと、結局だれも見ていなかった、となりかねません。

係①台所係:餅は小さく切り、一口の量を減らして出す

台所係の仕事は、食卓に出る前の段階で事故の芽を減らすことです。やることは、東京消防庁と消費者庁が挙げる「小さく切る」「一口の量は無理なく食べられる量に」の2つ。これを台所での作業に置き換えると、次のようになります。

  • 台所で切ってから出す。大きな餅を食卓で本人がかじる形にしない
  • 親の器だけ、いつもより小さめに切る。親の噛む力に合わせて大きさを調整する
  • 一度にたくさん盛らない。お椀に餅を何個も入れず、少なめに盛っておかわりで足すと、食べるペースも周りから見えやすくなる

3つ目は公的機関が示している方法ではなく、「一口の量を無理なく食べられる量に」を食卓で実行するための工夫の一例です。家の雑煮のスタイルに合わせて、やりやすい形に変えて構いません。

ここで気をつけたいのは、「小さく切ったからもう安心」と考えないこと。切り方は5つのポイントのうちの1つにすぎません。小さくしても、急いで飲み込めば危険は残ります。そこで、ほかの係との分担が効いてきます。

木のまな板の上で、包丁を使って長ねぎを小さく切っている手元

係①続き:食べる前にお茶や汁物で喉を潤しておく

台所係にはもう一つ仕事があります。餅を食べる前に飲むお茶や汁物の用意です。

東京消防庁は「餅を食べる前に、お茶や汁物を飲んでのどを潤しておきましょう」、消費者庁も「お茶や汁物などを飲み、喉を潤してから食べましょう」と案内しています。どちらも、ポイントは「食べる前に」という順番。

雑煮なら、まず汁をひと口すすってから餅に箸をのばす。お茶なら、席に着いたときに湯のみを手の届く場所に置いておく。台所係が先に出しておけば、自然と「まず飲む」流れが作れます。

食前に出すお茶の種類で迷ったら、緑茶・ウーロン茶・麦茶の違いを比べた記事が選ぶときのヒントになります。

YU人
YU人
お茶があるなら、詰まりそうなときに流し込めば平気だよね?
とりじん
とりじん
先に喉を潤すのはOK。でも、よく噛まずに流し込むのは危ないと消費者庁が注意しています

「お茶で流し込めば大丈夫」は誤解

ここは誤解が多いところなので、はっきり書いておきます。消費者庁は、喉を潤してから食べるよう勧める一方で、「よく噛まないうちにお茶などで流し込むのは危険です」と明記しています。

お茶の役割は、食べる前に喉を潤しておくこと。噛み切れていない餅を飲み物の力で押し流すための道具ではありません。

食べる前に潤す噛まずに流し込む
タイミング餅を口に入れる前餅を口に入れたあと
公的機関の扱い勧められている(東京消防庁・消費者庁)危険とされている(消費者庁)
家族の声かけ「先にお汁を飲んでからね」「お茶で流し込めば平気」は言わない

親が餅を口に入れたまま湯のみに手をのばしたら、「ゆっくりでいいよ」とひと声かける。これだけでも流し込みは防ぎやすくなります。

係②声かけ係:親に角を立てずに「ゆっくり」を伝えるコツ

悩みの中でも厄介なのが、「注意しても聞いてくれない」問題です。長年同じ食べ方をしてきた親にとって、子どもから「小さく切って」「ゆっくり食べて」と言われるのは、年寄り扱いされたように感じることもあります。

声かけ係が伝える中身は、東京消防庁の「急いで飲み込まず、ゆっくりと噛んでから飲み込む」と、消費者庁の「ゆっくりとよく噛んでから飲み込む」。ここは変えずに、伝え方だけを工夫します。家族の会話のコツとして、次のような方法があります。

  • 「あなたが心配」より「みんなでやる」形にする。「お父さんの分だけ小さく」ではなく、「今年は全員の餅を小さめにしたよ」と家族みんなのルールにする
  • 公的機関の数字を見せる。「東京消防庁のデータだと、1月がいちばん多いんだって」と、親の話ではなく世の中の話として出す
  • 食べ始める前に言う。口に入れてから注意すると慌てさせてしまうので、「いただきます」の前にさらっと伝える
  • 台所を一緒にやる。親に「切るの手伝って」と頼み、一緒に小さく切る作業をする

どれも医学的な方法ではなく、角を立てずに伝えるための工夫です。親の性格に合いそうなものを1つ選んで試してみてください。

YU人
YU人
でも、親に言うとムッとされそう…どう切り出せばいいかな
とりじん
とりじん
数字を見せて、一緒に小さく切るのが角が立ちにくいですよ。家族全員のルールにするのも手です

「親を注意する」より「家族の段取りを決める」。この切り替えができると、声かけ係の負担はぐっと軽くなります。

係③見守り係:食べ終わるまで、誰か1人が様子を見る

見守りは、東京消防庁と消費者庁のどちらもが挙げているポイントです。東京消防庁は「乳幼児や高齢者と一緒に食事をする際は、食事の様子を見守るなど注意を払いましょう」、消費者庁は「高齢者が餅を食べる際は、周りの方も食事の様子に注意を払い、見守りましょう」としています。

見守り係がやることはシンプルです。

  • 親が餅を食べている間は、なるべく席を離れない
  • 話に夢中になりすぎず、ときどき親の様子に目を向ける
  • 見守り係が席を立つときは、ほかの家族に「ちょっと見てて」と声をかけて交代する

正月の食卓は、台所との行き来や来客の対応で人の出入りが増えます。「誰かが見ているだろう」となりやすい場面ほど、担当を1人決めておく意味があります。

東京消防庁のページには、自宅で食事中に雑煮の餅を詰まらせ、家族が取り除こうとしたものの次第に意識を失った80代の事例が載っています。見守っていても、事故がゼロになるとは限りません。だから最後に、もしもの係が必要です。

木のテーブルで、年配の男性と子ども2人、エプロン姿の女性が鍋料理を囲んでいる食卓

係④もしもの係:詰まったサインはこの3つ

もしもの係の最初の仕事は、「詰まった」と気づくことです。東京消防庁は、次のようなときは食べ物などで気道が塞がれていることが疑われる、としています。

  1. チョークサインを出しているとき
  2. 声を出せないとき
  3. 顔色が急に真っ青になったとき

チョークサインとは、窒息して呼吸ができなくなったことを周りに知らせる、世界共通のサインです(東京消防庁)。仙台市消防局の説明では、親指と人差し指でのどをつかむしぐさのこと。このしぐさを見たら、異物を取り除く手順に入るよう案内されています。

様子がおかしいと感じたら、仙台市消防局は、本人に「喉が詰まったの?」とたずねるよう案内しています。声が出せず、うなずくようであれば窒息と判断し、直ちに行動しなければなりません。

YU人
YU人
119番と背中を叩くの、どっちが先なの?
とりじん
とりじん
周りに人がいれば、大声で助けを呼んで119番とAEDを頼み、すぐ取り除く手当てに入ります

餅が詰まったら:119番は周りに頼み、自分はすぐ咳→背中を叩く

餅が詰まったときの119番の頼み方と背中を叩くやり方を、東京消防庁「餅などによる窒息事故に注意!」の「窒息の応急手当」に沿って順番に書きます。ここは手順を変えずに紹介します。

  1. 大きな声で助けを呼び、119番通報とAEDの搬送を依頼する。そして、直ちに気道異物除去(詰まった物を取り除く手当て)を始めます。
  2. 呼びかけて反応があれば、まず咳をさせる。咳をすることが可能であれば、できる限り咳をさせます。
  3. 咳もできずに窒息しているときは、背部叩打法(はいぶこうだほう)を行う。
    • 本人が立っている場合や座っている場合は、背中側から、片手の手のひらの付け根で、両側の肩甲骨の間を数回以上強く叩きます。
    • 本人が倒れている場合は、手前に引き起こして横向きにし、自分の足で本人の胸を支え、背中を叩きます。
  4. 呼びかけに反応がない場合、または反応がなくなった場合は、ただちに心肺蘇生を開始する。

周りに誰もいないとき(1人のとき)について、東京消防庁は「大声で応援を呼んでも誰も来ない場合は、119番通報とAEDの搬送はせずに直ちに気道異物除去を始めます」としています。仙台市消防局も、救助者が一人の場合には、本人に反応がある間は、119番通報より異物除去を優先して行う、と案内しています。

東京消防庁によると、背部叩打法は誰にでも実施可能で、比較的簡単な方法です。消費者庁も、手のひらの付け根部分で、左右の肩甲骨の中間あたりを数回以上力強く叩く方法として紹介しています。

なお、乳児(赤ちゃん)は手当ての方法が大人と異なります。この記事は高齢の親を想定した内容なので、乳児の手当ては講習などで別に確認してください。

背中を叩いても取れないとき・反応がなくなったとき

背部叩打法で取れないときの方法として、消費者庁と仙台市消防局は「腹部突き上げ法」を紹介しています。なお、東京消防庁の餅のページには腹部突き上げ法の記載はありません。ここは消費者庁「コラムVol.12 高齢者の事故」と仙台市消防局「気道異物の除去【傷病者の反応(意識)がある場合】」の内容です。

消費者庁によると、腹部突き上げ法は、相手の上腹部を手前上方に強く突き上げて、喉などに詰まった餅を取り除く方法で、背部叩打法で餅などが出てこないときに行います。仙台市消防局は、手の位置を次のように説明しています。

  1. 本人の後ろからウエスト付近に手を回す
  2. 片手で握りこぶしを作り、その親指側を本人のへそより少し上に当てる
  3. その手をもう一方の手で握り、すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げる

次の人には腹部突き上げ法を行いません。

  • 消費者庁: 乳児や妊婦、高度肥満の人に行ってはいけない
  • 仙台市消防局: 明らかに妊娠していると思われる女性や高度な肥満者には、背部叩打法のみを行い、腹部突き上げ法は行わない

また仙台市消防局は、横になっている人が自力で起き上がれない場合は背部叩打法を行う、としています。

手当ては、異物が取り除けるか、本人の反応がなくなるまで続けます(仙台市消防局)。そして、反応がない、または反応がなくなった場合は、ただちに心肺蘇生を開始します(東京消防庁)。

心肺蘇生やAEDの使い方は、文章を読んだだけで身につくものではありません。この記事では手技の説明はせず、後半で紹介する講習で実際に体を動かして覚えることをおすすめします。

取れたあとも受診を(救急隊に伝えること)

餅が取れてほっとしても、それで終わりにはしません。

消費者庁は、腹部突き上げ法を用いた場合は腹部の内臓を傷める可能性があるため、救急隊にその旨を伝えるか、速やかに医師の診察を受けさせるよう案内しています。仙台市消防局も、腹部突き上げ法を行ったときは、行ったことを到着した救急隊員に伝えるよう案内しています。さらに大事なのが、119番通報前に異物が取れた場合でも、病院での診察は必要だという点です。

もしもの係が覚えておきたいのは、次の2点です。

  • 腹部突き上げ法をしたら、到着した救急隊員にそのことを伝える
  • 取れたあとも、病院で診察を受ける

あわせて消費者庁は、自宅から119番通報した場合に、保険証やふだん飲んでいる薬(またはお薬手帳)などを用意するよう呼びかけています。帰省先では、親の保険証やお薬手帳がどこにあるのか、着いたその日に聞いておくと慌てずに済みます。

開いたノートの上に置かれた万年筆。ページには手書きのメモが並んでいる

帰省前にできる準備:応急手当の講習を受けておく

東京消防庁のポイントの5つ目は「いざという時に備え、応急手当の方法をよく理解しておきましょう」。もしもの係を引き受けるなら、帰省前に講習を受けておくのがいちばん確かな準備です。

消費者庁のメールマガジン「Vol.695 9月9日は『救急の日』」では、応急手当の技術は自分で実践して身につけることが大事だとして、次の受け先を挙げています。

  • 各消防本部・消防署での救命講習
  • 総務省消防庁「一般市民向け 応急手当WEB講習」(オンラインで学べる)
  • 日本赤十字社の講習

講習の開催状況は自治体などによって異なるため、住んでいる地域の消防のホームページなどで事前に確認が必要です。まずはWEB講習で流れをつかみ、そのあと地元の救命講習で実際に手を動かす、という順番でもいいと思います。

帰省のときに家族で決めておきたいことは、餅の係だけではありません。電話で家族を名乗る詐欺に備えて、家族だけの合言葉を決めておく方法もこの機会に話し合っておくと、親を守る備えがもう一つ増えます。

やりがちな失敗4つ

最後に、正月の食卓でよくある失敗を4つ挙げておきます。どれも「悪気はないけれど、つい」というものばかりです。

  1. 大きいまま出してしまう。例年どおりの大きさで出し、親が自分でかじる形になる。台所で小さく切ってから出しましょう。
  2. 「お茶で流し込めば平気」と言ってしまう。消費者庁は、よく噛まないうちに流し込むのは危険としています。お茶は食べる前に飲むものです。
  3. 全員が食卓を離れている。台所や来客の対応で、気づけば誰も親を見ていない。見守り係が席を立つときは交代を頼みましょう。
  4. 周りに人がいるのに119番を頼み忘れる。慌てて手当てだけに集中してしまう。東京消防庁の手順では、大声で助けを呼び、119番通報とAEDの搬送を依頼し、直ちに取り除く手当てを始めます。

4つとも、係を決めておけば防ぎやすい失敗です。帰省の前に、この一覧を家族で共有しておくのもおすすめです。

よくある質問

Q1. 餅は何センチに切ればいいですか?
A. 東京消防庁や消費者庁のページに、決まった数字は示されていません。本人が無理なく食べられる大きさに小さく切り、一口の量も控えめにしてください。

Q2. お茶で流し込めば安全ですか?
A. 食べる前にお茶や汁物で喉を潤すことは勧められていますが、よく噛まないうちにお茶などで流し込むのは危険だと消費者庁は注意しています。

Q3. 詰まったら119番と背中を叩くのはどちらが先ですか?
A. 周りに人がいれば、大きな声で助けを呼び、119番通報とAEDの搬送を依頼して、直ちに詰まった物を取り除く手当てを始めます。大声で呼んでも誰も来ない場合は、119番通報とAEDの搬送はせずに、直ちに取り除く手当てを始めます(東京消防庁)。

Q4. 餅が取れたら病院に行かなくていいですか?
A. 取れた場合でも、病院での診察は必要です。腹部突き上げ法を行った場合は、到着した救急隊員にそのことを伝えてください(消費者庁・仙台市消防局)。

Q5. 応急手当はどこで習えますか?
A. 各消防本部・消防署での救命講習、総務省消防庁の一般市民向け応急手当WEB講習、日本赤十字社の講習があります。開催状況は地域によって異なるので、事前に確認してください(消費者庁)。

まとめ:今年の雑煮は「小さく・潤して・見守って・もしもの係」

高齢の親が餅を詰まらせないために、決まった「何センチ」はありません。切り方の答えは、親の噛む力に合わせて小さく切ること。そのうえで、帰省した家族で4つの係を分けておきましょう。

  • 台所係:小さく切り、一口の量を減らして出す。食べる前のお茶や汁物を用意する
  • 声かけ係:「ゆっくり、よく噛んで」を、家族みんなのルールとして伝える
  • 見守り係:食べ終わるまで、誰か1人が様子を見る
  • もしもの係:詰まったサインに気づいたら、大声で助けを呼んで119番通報とAEDの搬送は周りの人に頼み、自分は直ちに取り除く手当てを始める。誰も来なければ、119番通報とAEDの搬送はせずに直ちに手当てを始める。取れても病院で診てもらう

東京消防庁の5年分のデータでは、餅などの窒息による救急搬送は1月だけで135人。今は10月なので、正月まで2か月以上あります。講習を受ける時間も、家族で段取りを話す時間も十分に取れる時期です。

親の健康が気になってきたら、餅のことに限らず、年に一度の健康診断の結果も一緒に見ておくと安心です。数値の見方は健康診断の数値の読み方をまとめた記事で紹介しています。

※この記事は公的機関の公開情報をまとめたもので、医療行為の指導ではありません。応急手当は、消防などの講習で正しい方法を身につけてください。

数字の根拠

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