【ノロウイルス家庭の消毒】ハイター等の薄め方・アルコールでは不十分
夜中に子どもが吐いた。もしかしてノロウイルスかもしれない。片付けなきゃと思っても、家にあるのはキッチンの漂白剤とアルコールスプレーくらい。検索して自治体のPDFを開いてみたものの、スマホでは表の字が小さくて読めない……。そんな場面を想定して、この記事をまとめました。
ノロウイルス対策で家庭の消毒に使うのは、家庭用の塩素系漂白剤(ハイターなど)を水で薄めた液です。この記事では、ハイターなどの薄め方を500mLのペットボトルとキャップで量れる形にし、「吐いた床」「布もの」「トイレ」「食器」「手」の場面ごとに、どの濃さを使うかを並べました。
分量や手順は、厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」、宮城県・広島県・広島市の公式ページ、国民生活センターの注意喚起に書かれている内容だけを使っています(いずれも2026年10月19日確認)。塩素系漂白剤は製品ごとに濃さが違うため、作る前に必ずボトルの表示を確かめてください。
- 夜中に子どもが吐いた…よく聞く5つの声
- 結論:ノロウイルスの家庭消毒は、塩素系漂白剤(ハイターなど)を薄めて拭く
- 冬に増えるノロウイルス、数字で見る流行の大きさ
- まず家にある物を棚卸し:使える物・足りない物
- アルコールスプレーだけでは不十分な理由
- 作る濃さは2種類だけ:0.1%と0.02%
- 500mLペットボトルで作る薄め方(キャップ何杯か)
- 作る前に守る3つ:酸性タイプと混ぜない・換気・手袋
- 吐いた床の片付け、この順番で
- カーペット・服・布団はどうする?
- トイレとドアノブ:家族にうつさない拭く場所リスト
- 食器・ふきん・おもちゃの消毒
- 手は石けんと流水が基本
- 治ったあとも、しばらくは気をつける
- こんな時は受診を
- やりがちな失敗5つ
- よくある質問
- まとめ
夜中に子どもが吐いた…よく聞く5つの声
ノロウイルスの片付けで迷うポイントは、自治体の配布資料や検索結果を見ていくと、だいたい同じところに集まっています。よく見かける疑問をまとめると、次の5つです。
- 家にあるアルコールスプレーで拭けば大丈夫なのか
- 漂白剤は何mLを、水どれくらいで薄めればいいのか
- 濃さが2種類あると聞いたけれど、どう使い分けるのか
- 吐いた床やカーペットは、どの順番で片付ければ家族にうつらないのか
- 症状が治まったら、もう普段どおりに戻していいのか
どれも「今すぐ知りたい」ものばかり。しかも答えは、資料のあちこちに分かれて載っています。ここから先は、この5つに順番に答えていきます。
結論:ノロウイルスの家庭消毒は、塩素系漂白剤(ハイターなど)を薄めて拭く
先に答えを言います。家庭でノロウイルスの消毒をするなら、主役は塩素系漂白剤です。厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(最終改定 令和3年11月19日)は、ノロウイルスをしっかり失活化させる方法として、次亜塩素酸ナトリウムと加熱による処理などを挙げています。そのうえで、次亜塩素酸ナトリウムは「家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます」と注記しています。
作る液は2種類だけ。宮城県の公式ページ「ノロウイルスによる食中毒について」では、下痢便や吐いた物の処理には0.1%、調理器具・トイレのドアノブ・便座・床などの日常的な消毒には0.02%の液を使うと整理されています。
- ボトルA(0.1%):吐いた物・便の処理用
- ボトルB(0.02%):日常の拭き掃除用(ドアノブ・便座・床など、手が触れる場所)
この2本を、場面に合わせて使い分ける。家庭の薄め方で覚えることは、基本的にこれだけです。どちらも作り方は後のセクションで、キャップ何杯という形で紹介します。
冬に増えるノロウイルス、数字で見る流行の大きさ
ノロウイルスは一年中見られますが、山場は冬です。厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(Q8)によると、ノロウイルスによる食中毒は11月くらいから件数が増え始め、12月〜翌年1月がピークになる傾向があります。10月の今は、ちょうど備え始めるのにいい時期です。
規模も小さくありません。同じQ&A(Q4、数値は令和8年6月30日更新)によると、令和7年のノロウイルスによる食中毒は、事件数が総数1,172件のうち462件(39.4%)、患者数が総数24,727人のうち18,566人(75.1%)。食中毒の患者の4人に3人が、ノロウイルスによるものだった計算です。
グラフは同じ厚生労働省のQ&Aの表から、令和3年〜7年の患者数を並べたものです。令和7年の18,566人は、令和6年の8,656人の2倍以上になっています。ただし、これはあくまで「食中毒」として報告された人数。家の中で家族から家族へうつった人数は含まれていません。
まず家にある物を棚卸し:使える物・足りない物
夜中に慌てて買いに走らなくて済むよう、まずは家にある物を確認しておきましょう。厚生労働省のQ&A(Q20)と宮城県のページに出てくる道具を、家庭で用意しやすい形に並べ替えました。
| 物 | 使えるか | 使い道 |
|---|---|---|
| 塩素系漂白剤(ハイターなど) | ○ | 薄めて消毒液にする。ボトルの濃さの表示を確認 |
| 500mLのペットボトル(空き) | ○ | 消毒液を作る容器。キャップは計量にも使える |
| 使い捨て手袋・マスク・エプロン | ○ | 片付けるときに着ける |
| ペーパータオル・新聞紙 | ○ | 吐いた物を覆う・拭き取る |
| ビニール袋 | ○ | 拭いた物を入れて口を縛って捨てる |
| 油性ペン | ○ | ボトルに「消毒液」と書いて誤飲を防ぐ |
| アルコールスプレー | △ | ノロウイルスには不十分。塩素系と混ぜない |
表の中で「△」にしたのがアルコールスプレーです。理由は次のセクションで説明します。
なお、ネットには「キャップ1杯でOK」のように、元の製品の濃さを書かずに分量だけを伝える情報も出回っています。薄め方のような数字は、公的な資料とボトルの表示の2つで確かめるのが確実です。ネットの情報をうのみにしないための確かめ方は、AIの答えを一次情報で確かめる手順をまとめた記事で詳しく紹介しています。
アルコールスプレーだけでは不十分な理由
普段の除菌の感覚でアルコールを使いたくなりますが、ノロウイルスの場合は話が別です。公的な資料の書き方を、そのまま並べてみます。
- 宮城県「ノロウイルスによる食中毒について」:アルコールによる消毒は、ノロウイルスに対して効果が無いので注意(流水による手洗いが原則)
- 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(Q16):消毒用エタノールによる手指消毒は、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはならない。すぐに手洗いができない場合に、手洗いの補助として使う
- 同Q&A(Q17):ノロウイルスを完全に失活化する方法として挙げているのは、次亜塩素酸ナトリウム・亜塩素酸水・加熱による処理
つまり、アルコールは「まったく無意味」というより、ノロウイルス対策の主役にはならない、という位置づけです。吐いた物の処理や床・トイレの消毒は塩素系漂白剤、手は石けんと流水。アルコールは、手を洗えないときのつなぎ程度に考えておくと迷いません。
作る濃さは2種類だけ:0.1%と0.02%
「濃さが2種類ある」と聞くと難しく感じますが、使い分けはシンプルです。宮城県のページと広島市の公式ページ「消毒液の作り方と使用上の注意(次亜塩素酸ナトリウム)」(2026年1月30日更新)をもとに、用途を整理しました。
| 濃さ | 使う場面 |
|---|---|
| ボトルA:0.1%(1,000ppm) | 吐いた物・下痢便の処理(上からかける・袋の中に入れる)。広島市は、便や吐いた物が付いた床やおむつも0.1%の対象としている |
| ボトルB:0.02%(200ppm) | トイレの便座・ドアノブ・手すり・床などの日常的な消毒、衣服や器具のつけ置き |
覚え方は「吐いた物・便そのものの処理は濃いA、毎日の拭き掃除は薄いB」。ただし、吐いた物を拭き取ったあとの床をAとBのどちらで拭くかは、資料によって書き方が違います。違いは後の「吐いた床の片付け」で紹介します。
濃い液のほうがよく効きそうに思えますが、広島市のページは、濃いほど、また長く置くほど、金属を傷める作用や漂白作用(色が抜ける)も強くなると注意しています。日常の拭き掃除にまで0.1%を使う必要はありません。
500mLペットボトルで作る薄め方(キャップ何杯か)
作る前に:市販の塩素系漂白剤は、商品によって塩素の濃さが違います(宮城県)。広島市のページによると、市販品の原液の濃さには1%〜12%程度のものがあります。まずボトルの表示で濃さを確かめ、下の分量はその濃さに合うものだけを使ってください。
500mLペットボトルのキャップは、1杯で約5mLです(広島市・広島県)。計量カップがなくても、キャップで量れます。ここでは、公的な資料に書かれている分量だけを紹介します。
ボトルA:0.1%の作り方
- 濃さ5%の漂白剤:キャップ2杯(約10mL)を500mLのペットボトルに入れ、水をボトルいっぱいまで入れる(宮城県)
- 濃さ1%の漂白剤:キャップ10杯分を500mLのペットボトルに入れ、同じように水で満たす(宮城県)
- 濃さ10%の漂白剤:キャップ1杯分を500mLのペットボトルに入れ、同じように水で満たす(宮城県)
ボトルB:0.02%の作り方
- 濃さ5%の漂白剤:キャップ半分弱(約2mL)を、ペットボトル1杯(500mL)の水に加える(広島市)
- まとめて作る場合:家庭用塩素系漂白剤(濃度約5%)10mL(キャップ2杯分)を、水2.5L(500mLのペットボトル5本分)で薄める(広島県)
- 濃さ10%の漂白剤:水1Lに対して原液2mL(広島市の表)
宮城県のページは、0.02%にするには「0.1%の液をさらに5倍に薄める」と説明しています。キャップ半分弱の量が量りにくいときは、広島県の「キャップ2杯+水2.5L」の作り方のほうが量りやすいはずです。ただ、2.5Lは家庭では余りやすい量。使い切れない分を取っておかないことも大切です(作り置きの話は後のセクションで)。
できた液のボトルには、油性ペンで「消毒液」とはっきり書きます。広島市のページにも、消毒液を入れたペットボトルは誤って飲まないよう、消毒液だと分かる表示をするよう求める一文があります。小さな子どもがいる家庭ほど、ここは手を抜かないでおきたいところです。
作る前に守る3つ:酸性タイプと混ぜない・換気・手袋
塩素系漂白剤は、使い方を間違えると危険な面もあります。作る前・使う前に、次の3つだけは必ず守ってください。
1. 酸性タイプの洗剤や、アルコールと混ぜない
国民生活センターの注意喚起「住宅用塩素系洗浄剤の使い方-まぜるな危険!浴室などで事故が発生しています-」(2026年3月18日公表)は、塩素系洗浄剤を酸性洗浄剤などと一緒に使うと、有害な塩素ガスが発生すると説明しています。同センターのテストでは、次亜塩素酸塩を含む塩素系洗浄剤を、酸やエタノールなどと混ぜたときに塩素ガスが発生しました。アドバイスは「塩素系洗浄剤は、必ず単独で使用」。アルコールスプレーを吹いた直後の場所に、塩素系の液を重ねるのも避けておきます。
2. 換気をする
広島市・広島県のページには、どちらも「換気を十分に」とあります。宮城県のページにも、使うときに刺激臭が出ることがあると注意があります。窓を開けてから作業を始めましょう。
3. 手袋をする・手には使わない
広島市のページによると、次亜塩素酸ナトリウムは皮膚への刺激が強いため、手洗いなど人には使わず、ビニールなどの手袋を着けて扱います。皮膚や服に付いたら、すぐに水で洗い流すこと。次亜塩素酸ソーダで手を洗うのは手荒れの原因になり、逆効果です(宮城県)。
もう1つ、金属にも注意が必要です。厚生労働省のQ&A(Q23)は、次亜塩素酸ナトリウムには金属を腐食させる性質があるため、消毒後に薬剤をしっかり拭き取るよう注意しています。蛇口やドアノブなど金属の部分は、消毒のあとに水拭きまでがセットです。
「強そうだから足す」は、塩素系漂白剤では一番やってはいけない使い方です。トイレの消毒も、漂白剤を薄めた液だけで行います。
吐いた床の片付け、この順番で
いよいよ本番です。厚生労働省のQ&A(Q20)に書かれている手順を、家庭向けに順番どおり並べました。
- 身支度をする:使い捨てのエプロン(ガウン)、マスク、手袋を着ける。窓を開ける
- 静かに拭き取る:吐いた物をペーパータオルなどで、ウイルスが飛び散らないよう静かに拭き取る
- 袋に入れる:拭いたペーパーはビニール袋へ。袋の中には、中身が十分に浸る量のボトルA(0.1%)を入れるのが望ましいとされている
- 床を消毒する:拭き取ったあとの床を、消毒液で浸すように拭く。濃さは厚生労働省が0.02%(ボトルB)、宮城県・広島市が0.1%(ボトルA)と資料で分かれる(下の「床の濃さについて」を参照)
- 水拭きする:最後に床を水拭きする
- 換気する:空気の流れに注意しながら、十分に換気する
厚生労働省のQ&Aによると、ノロウイルスは乾燥すると空中に漂いやすく、それが口に入って感染することがあります。だからこそ「乾く前に、速やかに」が大事。朝まで新聞紙をかぶせて放っておく、ということはしないでください。
宮城県のページは、もう少し丁寧なやり方を紹介しています。新聞紙などで吐いた物を覆い、その上から0.1%の液を静かにかけて10〜20分ほど置いてから、袋に入れて密封。吐いた場所はさらに、同じ0.1%の液を十分しみ込ませた布や新聞紙で5〜10分覆ってから拭き取ります。拭くときは布を往復させず、一方向に動かすのがポイントです。
床の濃さについて:吐いた物を拭き取ったあとの床に使う濃さは、資料によって分かれます。厚生労働省のQ&A(Q20)は約200ppm(0.02%・ボトルB)。広島市のページは「便や吐物が付着した床」を0.1%(ボトルA)の対象に挙げ、宮城県の手順も吐いた場所を0.1%の液で覆う方法です。どちらも公的な資料の方法なので、この記事では出典ごとに並べました。どちらで拭いた場合も、最後の水拭きと換気は忘れずに(広島市も、使用後は水で洗い流すか拭き取るよう求めています)。
どちらの方法でも共通するのは、片付ける人以外を近づけないこと(宮城県)。きょうだいがいる家庭では、片付けが終わるまで別の部屋にいてもらいましょう。終わったら手袋を外し、石けんと流水で手を洗います。
カーペット・服・布団はどうする?
布ものに吐いてしまった場合も、捨てるしかないわけではありません。厚生労働省のQ&A(Q21)は、次の流れを示しています。
- 付いた汚れを、ウイルスが飛び散らないように取り除く
- 洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗い(下洗い)する。しぶきを吸い込まないよう注意
- 下洗いしたあとの消毒は、85℃・1分間以上の熱水洗濯が適している
- 熱水洗濯ができる洗濯機がなければ、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)で消毒する。十分すすぎ、高温の乾燥機などを使うと効果が高まる
- 布団などすぐに洗えない物は、よく乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使う
下洗いをした場所(洗面台や浴室の床など)も、ボトルB(0.02%)で消毒してから洗剤で掃除する、という流れもQ&Aに載っています。
気をつけたいのは色落ちです。塩素系漂白剤には漂白作用があります。広島県のページ「ノロウイルス対策用消毒液の作り方」(2023年11月24日掲載)は、色落ちが気になる衣類には使わず、85℃以上の熱水消毒など別の方法で消毒するよう案内しています。お気に入りの服やカーペットは、漂白剤をかける前にひと呼吸置いて考えたいところです。
トイレとドアノブ:家族にうつさない拭く場所リスト
家族にうつらないために、トイレの消毒は大切なポイントです。宮城県のページは、トイレの取っ手やドアノブなど、手指が触れる場所はこまめに洗浄・消毒するよう呼びかけています。厚生労働省のQ&A(Q23)によると、ドアノブ・カーテン・リネン類・日用品などからもウイルスが検出されます。
ボトルB(0.02%)で拭く場所を、家の中の動きに沿ってリストにしました。
- トイレ:便座、便座のふた、水を流すレバーやボタン、トイレの取っ手、ペーパーホルダー
- 廊下・部屋:ドアノブ、手すり、照明のスイッチ
- 洗面所:蛇口のハンドル(金属なので消毒後に水拭き)
- リビング:リモコンなど、家族みんなが触る日用品(水拭きできる物だけ)
拭くときの注意も、ここでおさらいを。手袋をする、換気する、金属部分は消毒後に水拭きする。そして、トイレ用の酸性洗剤とは絶対に混ぜない。国民生活センターは、排水トラップの中に前に使った洗浄剤が残っている場合があるとして、使ったあとは十分に水を流し、ほかの洗浄剤を続けて使わないよう呼びかけています。消毒のあとに、続けてトイレ用の酸性洗剤で掃除するのは避けてください。
拭いた布やペーパーはビニール袋に入れ、口を縛って捨てます。塩素系漂白剤で消毒した処理物は、一般ゴミと同じように出してかまいません(宮城県)。
食器・ふきん・おもちゃの消毒
キッチンまわりは、熱湯と塩素系の2つが使えます。厚生労働省のQ&A(Q17)によると、まな板・包丁・食器・ふきん・タオルなどは、熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効です。調理器具は洗剤で十分に洗ったあと、塩素濃度約200ppm、つまりボトルB(0.02%)で浸すように拭く方法もあります。
また、Q&A(Q22)では、食器の下洗いをした場所や、吐いたあとにうがいをした場所も、約200ppmの液で消毒し、そのあと洗剤で掃除する流れです。キッチンのシンクや洗面台も、忘れずに拭いておきたい場所です。
おもちゃについては、公的資料に「おもちゃ専用」の手順は見当たりませんでした。日用品からもウイルスが検出される(厚生労働省Q23)ことを考えると、水拭きできる素材の物はボトルBで拭き、そのあと水拭きするのが現実的です。広島市のページの注意事項は、消毒後は必ず水で洗い流すか拭き取ること。色が抜けたり金属部分が傷んだりすることもあるため、消毒する物への影響が分からないときは、最初は薄い濃度で試して様子を見るのが広島市の勧める方法です。
手は石けんと流水が基本
消毒液をどれだけ丁寧に作っても、最後に頼りになるのは手洗いです。厚生労働省のQ&A(Q16)は、手洗いを「手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法」としています。
同じQ&Aと宮城県のページから、手洗いのコツを拾うと次のとおりです。
- 爪を短く切り、指輪などは外しておく
- 石けんを十分に泡立てて洗う
- 指先や指の間は洗い残しが出やすいので、特に丁寧に
- 流水でしっかりすすぐ
- 拭くのはペーパータオルか清潔なタオル。手拭きタオルの共用はしない
洗うタイミングは、トイレのあと、食事の前、調理の前、そして片付けやおむつ替えのあと。厚生労働省のQ&Aでは、手袋をして直接触れないようにしていても、汚物の処理のあとは必ず手を洗うことになっています。石けん自体にウイルスを直接失活化する効果はないものの、手の脂などの汚れを落として、ウイルスを手からはがれやすくする働きがあるとされています。
家族が順番に体調を崩しやすい季節は、手洗いの習慣がいちばんの土台になります。季節の変わり目に風邪をひきやすくなる理由と、日常でできる対策は、季節の変わり目の風邪対策をまとめた記事も参考になるはずです。
治ったあとも、しばらくは気をつける
厚生労働省のQ&A(Q9)によると、ノロウイルスの潜伏期間は24〜48時間で、吐き気・嘔吐・下痢・腹痛などの症状は、通常1〜2日続いたあとに治まります。ここで気がゆるみがちですが、油断は禁物。
同じQ&A(Q18)によると、下痢などの症状がなくなっても、通常では1週間程度、長いときには1か月程度、ウイルスの排泄が続くことがあります。これは食品を扱う仕事の人に向けた注意として書かれたものですが、家庭でも同じ考え方が役に立ちます。また、感染しても症状が出ない場合や、軽い風邪のような症状で済む場合もあるとされています(Q9)。
症状が治まってから少なくとも1週間ほどは、次の2つを続けるのがおすすめです。
- トイレのあとの石けんと流水での手洗い(本人も家族も)
- 便座・水を流すレバー・ドアノブをボトルB(0.02%)で拭く
Q&A(Q18)には、家庭に下痢や嘔吐の症状がある小さな子どもや介護が必要な高齢者がいる場合、トイレなどを衛生的に保つ工夫が求められる、という記載もあります。家族の誰かが料理を担当しているなら、回復した本人はしばらく調理を家族に任せるのも1つの方法です。
体調が戻ってきたら、食事もだんだん普段どおりに戻していきます。おなかの調子と食べ物の関係が気になる人は、腸と整腸剤、食品の選び方を解説した記事もあわせてどうぞ。
こんな時は受診を
消毒の話から少し離れますが、看病する側として知っておきたいことも整理しておきます。厚生労働省のQ&A(Q11)によると、ノロウイルスに効く抗ウイルス剤は現在なく、治療は症状をやわらげる対症療法が中心です。特に体力の弱い乳幼児や高齢者は、脱水症状を起こしたり体力を消耗したりしないよう、水分と栄養の補給を十分に行うことが大切です。脱水症状がひどい場合は、病院で点滴(輸液)などの治療が必要になることもあります。
水分がとれない、ぐったりしている、いつもと様子が違う。そう感じたら、自己判断で様子を見続けず、かかりつけの医師に相談してください。厚生労働省のQ&A(Q24)は、感染が疑われる場合の相談先として、最寄りの保健所やかかりつけの医師を挙げています。下痢止めの薬を自己判断で使うことについても、同じQ&A(Q11)は、回復を遅らせることがあるので使わないことが望ましいとしています。
子どもの夜間の急な症状で、受診すべきか迷ったときは、子ども医療電話相談(#8000)が使えます。厚生労働省の「子ども医療電話相談事業(#8000)について」(令和8年5月22日現在)によると、全47都道府県で深夜0時以降も実施されています。受付時間は都道府県ごとに違うので、住んでいる地域の時間を一度確かめておくと、いざという時に慌てずに済みます。
水分補給の基本的な考え方は、経口補水液の飲み方と量をまとめた夏の脱水対策の記事にまとめています。ただし子どもの場合の量や飲ませ方は、医師や#8000で確認するのが確実です。
やりがちな失敗5つ
最後に、ここまでの内容を「やってしまいがちな失敗」の形で振り返ります。
失敗1:アルコールスプレーだけで済ませる。ノロウイルス対策としては不十分です。吐いた物や床は塩素系漂白剤を薄めた液、手は石けんと流水が基本です。
失敗2:ボトルの表示を見ずに薄める。漂白剤の濃さは商品によって1%〜12%程度と幅があります(広島市)。キャップ何杯という分量は、元の濃さが分かって初めて使えます。
失敗3:酸性タイプの洗剤やアルコールと一緒に使う。塩素ガスが出るおそれがあります(国民生活センター)。塩素系は必ず単独で。
失敗4:乾いてから片付ける。乾燥するとウイルスが空中に漂いやすくなります(厚生労働省Q20)。吐いた物は、乾く前に速やかに処理を。
失敗5:薄めた液を作り置きする・ラベルなしで置いておく。広島市のページによると、薄めた消毒液は時間がたつと効果がなくなるため、使うときに必要な量だけ作るのが原則。作り置きはしません。中身が分からないペットボトルは、誤飲の原因にもなります。
よくある質問
Q1. ハイターなどの塩素系漂白剤は、どのくらい薄めればいいですか?
A. 濃さ5%の漂白剤なら、吐いた物の処理用の0.1%液は、キャップ2杯(約10mL)を500mLのペットボトルに入れて水で満たします(宮城県)。ドアノブや便座などに使う0.02%液は、キャップ半分弱(約2mL)を水500mLに加えます(広島市)。商品によって濃さが違うので、必ずボトルの表示を確認してください。
Q2. アルコールスプレーはノロウイルスに効かないのですか?
A. 宮城県のページには「アルコールによる消毒は、ノロウイルスに対して効果が無い」とあり、厚生労働省のQ&Aでも、アルコールによる手指消毒は石けんと流水の手洗いの代用にはならないと説明されています。ノロウイルス対策の主役にはならないので、床やトイレは塩素系漂白剤を薄めた液、手は石けんと流水で洗います。
Q3. 薄めた消毒液は作り置きできますか?
A. 広島市は、薄めた消毒液は時間がたつと効果がなくなるため、使うときに必要な量だけ作り、作り置きをしないよう案内しています。ペットボトルで作る場合は、誤って飲まないよう消毒液だと分かる表示もしておきます。
Q4. 症状が治まったあと、いつまで気をつければいいですか?
A. 厚生労働省のQ&Aによると、症状がなくなっても通常1週間程度、長いときには1か月程度、便からウイルスが出続けることがあります。症状が治まってからもしばらくは、トイレのあとの手洗いと、便座やドアノブの拭き掃除を続けるのがおすすめです。
Q5. 色柄物の服に吐いてしまったときはどうすればいいですか?
A. 塩素系漂白剤には漂白作用があるため、広島県のページでは、色落ちが気になる衣類には使わず、85℃以上の熱水消毒など別の方法で消毒するよう勧めています。厚生労働省のQ&Aによると、汚れを取って下洗いしたあとは、85℃・1分間以上の熱水洗濯が適しています。
まとめ
ノロウイルスの家庭の消毒は、塩素系漂白剤(ハイターなど)を正しく薄めて使うことに尽きます。夜中に慌てないよう、ポイントをもう一度並べておきます。
- 作るのは2本:吐いた物・便用の0.1%(ボトルA)と、手が触れる場所用の0.02%(ボトルB)
- 薄める前に:ボトルの表示で濃さを確認。5%品ならAはキャップ2杯で500mL、Bはキャップ半分弱を水500mLへ
- 混ぜない:酸性タイプの洗剤やアルコールと一緒に使わない。換気と手袋も忘れずに
- 片付けは乾く前に:拭き取り→袋(中に0.1%)→床の消毒(厚生労働省は0.02%、宮城県・広島市は0.1%)→水拭き→換気
- 手は石けんと流水:アルコールは手洗いの代わりにならない
- 治っても1週間ほどは続ける:ウイルスの排泄は長いと1か月程度続くことがある
流行のピークは12月〜1月。今のうちに、家の漂白剤のボトルの濃さを確かめて、空のペットボトルを1本取っておくだけでも、いざという夜の動きがずいぶん変わります。子どもの様子がおかしいと感じたら、消毒よりも先に医師や#8000へ相談してください。
数字の根拠
- 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(最終改定 令和3年11月19日、Q4の数値は令和8年6月30日更新、2026年10月19日確認)… 令和7年の事件数462件/総数1,172件(39.4%)・患者数18,566人/総数24,727人(75.1%)、令和3〜7年の患者数(グラフの出典)、11月くらいから増加し12〜翌年1月がピーク(Q8)、潜伏期間24〜48時間・症状は通常1〜2日(Q9)、熱湯85℃以上で1分以上(Q17)、症状がなくなっても通常1週間程度・長いときは1か月程度ウイルスの排泄が続くことがある(Q18)、床は約200ppm・袋の中は約1,000ppm(Q20)、85℃・1分間以上の熱水洗濯(Q21) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
- 宮城県「ノロウイルスによる食中毒について」(2024年3月21日掲載、2026年10月19日確認)… 0.1%(1000ppm)と0.02%(200ppm)の使い分け、5%品キャップ2杯(約10mL)・1%品キャップ10杯・10%品キャップ1杯を500mLペットボトルで0.1%、さらに5倍で0.02%、覆ってから10〜20分・5〜10分置く処理方法 https://www.pref.miyagi.jp/site/syokunoanzen/noropage1.html
- 広島市「消毒液の作り方と使用上の注意(次亜塩素酸ナトリウム)」(2026年1月30日更新、2026年10月19日確認)… 市販品の原液の濃さ1%〜12%程度、キャップ1杯約5mL、5%品キャップ半分弱(約2mL)+水500mLで0.02%、10%品は水1Lに原液2mLで0.02%、作り置きしない https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/eisei/1003071/1005995/1011232.html
- 広島県「ノロウイルス対策用消毒液の作り方」(2023年11月24日掲載、2026年10月19日確認)… 家庭用塩素系漂白剤(濃度約5%)10mL+水2.5Lで0.02%、キャップ1杯約5mL、色落ちが気になる衣類は85℃以上の熱水消毒など https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/168/syoudokueki.html
- 国民生活センター「住宅用塩素系洗浄剤の使い方-まぜるな危険!浴室などで事故が発生しています-」(2026年3月18日公表、2026年10月19日確認)… 酸性洗浄剤やエタノールなどと混ぜると塩素ガスが発生、必ず単独で使用 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260318_1.html
- 厚生労働省「子ども医療電話相談事業(#8000)について」(令和8年5月22日現在、2026年10月19日確認)… 47都道府県で深夜0時以降も実施 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/newpage_55223.html
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